SIer辞めてどこ行くの?

SIerが嫌になったら脱出することはできるのか?どんな逃げ道があるのか?というかSIerってそんなにダメなのか?

SIer後のキャリアパスはどんなものがあるの? 業務SE/PM 20代後半編

20代後半でSIerを辞めようと思った貴方!ベストタイミングです。さっさと辞めましょう。貴方の年齢であれば選択肢は結構広いです。まぁこれ結構広いというのは別にSIerに限った話ではなくて、かつ絶対無理ではないという意味で実際に転職できるかどうかはもちろん貴方次第ですが。

20代後半というと一通り業務にも慣れ、小さなProjectを任せてもらい、きちんとDeliverした実績があるでしょう。この後のキャリアパスは大きく下記ぐらいかと思います。

  1. MBA
  2. コンサル
  3. 外資ITベンダー
  4. 外資Webサービス
  5. 国内メガベンチャー
  6. 国内スタートアップ
  7. その他一般企業のIT部門(特にクライアント)
  8. 起業

 キャリアアップ、端的に言って年収の向上を目指すなら1-4でしょう。5は基本的に搾取されるだけなのでお勧めしません。5でガンガンPromotionしていける能力がある方は1-4の選択肢をとったほうが良いです。6は初期にjoinして株をもらって上場でもすれば夢がありますが、20代後半で株をガチッともらえるpositionにつける人は稀だと思いますのでこちらもあまりお勧めしません。成功する確率も高く無いですし。そう言った一定程度他力本願な選択肢を取るぐらいであれば8で自分がコントロールできる範囲を増やしたほうが良いのでは?と思います。まぁ向いている人はごく少数なのと起業するような人はそもそもSIerには就職活動自体しないと思うのでこれもほぼ選択肢から外して良いと思います。

私のお勧めは今なら1か4で、大企業、特に外資のマネジメント職に付きたい人は今でも1が良いと思います。ある程度確立された大企業(日本企業は除く)ではDirector以上はMBAホルダーであることが多いです。それは別に彼らが特別なスキルを持っているとか、優秀とかいう理由ではなく、MBAを持っていることで専用の入り口からjoinできるからです。ぶっちゃけDirector以上になると一定以上のビジネススキルがきちんとあればあとは任される事業エリアと自分に付く部下の能力のガチャ(運勝負)みたいなところがあり、「ここじゃ無いな」と思ったらさっさと勝てる場所に戦場を変えるという勝負になります。もし自分が外資でマネジメント的な仕事をしたいと思ったらMBA一択だと私は思います。個人的にはあんまり面白そうな仕事とは思わないですけど。

将来自分で起業なども視野に入れたいのであれば4で経験を積みつつその分野のノウハウと満たされていないニーズを掴むこと、優秀な人材とのコネを作っておくことをお勧めします。2も悪くは無いのですが、中間ステップとして考えた場合は今規模が大きくなっているので希少性が失われていることと、経験できるないように振れ幅がありすぎるのでTop tierのファームで面白い経験が詰める、もしくは超優秀な人とコネができるならありだと思います。

7は特に「もっとまったりしたい」という人向けのパスですね。例えば広告代理店の案件をやっていてそのままそのクライアントのIT部門に転職するとか。基本的にSIerに発注しているような企業はITがコアな競争力の源泉では無いのでIT部門は緩いし人材のレベルも高くないので転職後に自分の価値を出しやすいです。その代わり傍流なので極端なPromotionは見込めないと思いますが。

こう見るとやっぱり20代後半は一番選択肢が多いですね。どうしようかなーと思った貴方、今が辞め時です!さっさと転職エージェントを探して登録しましょう。

 

SIerの良いところって何かないの?

SIerはDisられてばっかりなので頑張っていいところを挙げてみます。私が思いつくSIerのいいところは下記の通りです。

  1. 動くものを作ることができる
  2. 作ったものを人に使ってもらうことができる
  3. みんなでワイワイ仕事できる
  4. 給料がそんなに悪くはない
  5. 同僚に変な人が少ない
  6. 転勤が少ない
  7. キャリアの序盤でProject Managemenを経験できる

書き出してみて改めて感じたのですが、SIerはキャリアアップ的な魅力は7を除くとほぼないですね。Promotionのペースも遅いですし、給与テーブルも大したことないので収入を最大化したいという方はSIerにいる意味はほぼ無いです。 もっとまったりとみんなでワイワイ仕事がしたくて、そこそこ大きなプロジェクトに関わりたいという方に向いている職場かなと。後は転勤があまり無いという点も、地味ですが銀行やその他営業を全国展開しているビジネスと比べると特に新卒の観点ではメリットに感じている人が多いと思います。

 1, 2は意外とメリットとしては大きくて、やってみるとわかるのですが数ヶ月以上かけてチームで作り上げたものが世の中に出る、それが誰かに使われている、というのはなかなか他のものでは代え難い満足感があります。もちろんこれはサービス提供側に回るともっと満足度が高いのですが、外部から関わるSIerという立場でも顧客のシステムがローンチした時は感慨深いものがありますし、実際に業務で使われていることを確認すると「頑張ってよかったなぁ」と素直に思えるものです。もちろん使われることで満足していてOKということではないのですが、「自分の仕事が次につながって誰かの役に立っている」ことを実感できるのは仕事をする上で重要な要素になりうるかと思います。これが満たされない職業も世の中にはたくさんありますしね。

私は1,2と合わせて3も実際結構大きなメリットだと考えており、意識的にではなくても、これが理由で SIerを辞めない人も結構いるんじゃないかなぁと思います。要するにProject型の仕事って辛いけど楽しいんですよね。なんだかんだプロジェクトを進める間のトラブルも笑い話になりますし、文化祭の準備と同じで同じ目標に向かってみんなでワイワイ仕事するというのは楽しいものです。運用が始まってから大きめのトラブルが起こった時、偉いPMが警察の捜査本部みたいなノリで原因調査を指揮したりしてそれもまた離れてから思い出すと現場だなぁという感じでいいものです。その場にいると胃が痛いんですが。

7については転職につながる部分なので別で細かく書いてみたいと思います。

 

外から見るとSIerのどこがダメなの? 顧客視点編

Disられることの多いSIerですので、社員の観点だけではなく外の視点からもどこが批判されるのか、各ステークホルダーの観点からみてみましょう。関係する人は下記のような感じでしょうか。 

  1. 発注者の立場
  2. エンドユーザーの立場
  3. ビジネスパートナーの立場
  4. 競合の立場
  5. 投資家の立場
  6. 世間一般の立場
  7. 業界ウォッチャーの立場

まず今回は1番重要な顧客=発注者の立場から考えてみます。一口に顧客といっても色々なレイヤーの人がいるのですが、ここでは納品するシステムを実際に使って業務を行うエンドユーザー(上記の#2)とは分けて、SIerに対する発注者になる企業のIT部門の中の役員から担当従業員までを対象とします。

彼らの持つSIerへの不満の原因のうち典型的なものは

  1. 予算の必要性に対して説明が十分に出来ず、社内で責められる
  2. システムの仕様がユーザー部門の要求を満たしておらず、社内で責められる
  3. GO LIVEになった後トラブルが起こり、社内で責められる

と言ったところでしょうか。SIerへ発注する部門(多くは情報システム部門)の本音は、「これだけ大きな金額で発注しているのだから全部丸っと上手くやってくれ」ということだと思います。が、それはそもそも無責任というか職務放棄に近いスタンスですし、その発想自体システムというものの特性を理解できていないから出てきてしまうものです。ソフトウェアというのは(ハードウェアに比べれば)設計を比較的柔軟に変更できるというだけのものであって、仕様に基づく製品の動作という意味ではソフトでも何でもなく、設計されていないことには何も対処出来ません。言い換えれば100%のカバレッジと精度で仕様を定義できなければトラブルが発生することは不可避であり、ある程度以上複雑な業務について人間が完璧な設計を行うことは現実的ではありません。ですので上記の2,3は程度問題であり、ある程度以下の品質であれば当然SIerが責められるべきですが、100%を求めるのは発注者の姿勢として間違っています。そうではなく、どこが適切なコストと品質のバランスなのか、どうやって品質が100%にはならない中で効果的にシステムを使っていくのかを考えるべきです。

一方で、1についてはSIerの責任も非常に大きいというのが私の意見です。一般的にSIerは、開発にかかる工数や、使用するハードウェア、ソフトウェアの費用などを積み上げてコストの内訳を出し、なぜこの機能にこれだけのコストかかるのかという説明を行うことが多いのですが、これは効果的な顧客のサポートになっていません。本来SIerがやるべきなのは、「納品するシステムがどれだけ投資以上の価値を"生み出す"ものなのか」という顧客のビジネスケース作成に対するサポートと、その価値を最大限引き出すためにどのような体制を構築して、どうやってユーザーを巻き込むべきなのかを提案することです。それこそが直接の顧客である情報システム部門が顧客企業の中で提供する価値だからです。私が知っている限りではこれができているSIerの営業は非常に稀で、社内でコンサルを行なっている部署もほとんどできていません。「じゃあ他の業界の営業はこれができているのかというと」まぁそんなこともないわけですが、SIerへの発注は一般に金額がかなり大きなものになるので、ビジネスケース作成のサポートは顧客の発注意思決定上も決定的に重要な要素になります。ここが顧客目線で見た時にSIerの提供価値が足りていないポイントです。

 

SIer後のキャリアパスはどんなものがあるの? 業務SE/PM 20代前半編

さてこのBlogのテーマはSIerからのキャリアチェンジなので、そろそろ本題にいきましょう。キャリアパスは職種と経験の長さ/現在のPositionによって異なってくるので、選択肢が変わってくる単位ごとに分けて説明していきます。

20代前半でSIerを辞めようと思った貴方!慧眼です。さっさと辞めましょう。貴方の年齢であれば所謂第二新卒的な扱いになるので基本的にどこにでも行けます。"行けます"というのは絶対無理ではないところが多いという意味で、実際に転職できるかどうかはもちろん貴方次第ですが。 

SIerに何を期待して就職したかにもよりますが、私の知る範囲で20代前半(3年以内)で転職していった人の行き先は

  1. 家業を継ぐ:意外とこれが多い
  2. Webサービス系:De●Aとかその辺
  3. リクルート:もっと目をギョロギョロさせて生きたかった人向け
  4. 外資金融:1人だけいました
  5. MLM:あちら側に行かれました
  6. 教員:元々やりたかった夢に戻る系
  7. 看護師:元々やりたかった夢に戻る系 

こんな感じです。同業他社はほぼいませんでした。まぁ慣れてくる前にSIという業種が合わなくて辞めるんだから当たり前ですね。こうやって振り返ると20代前半で辞める人というのは昔はほとんどいなかったように思います。これは今ほどTech系の人材がもてはやされていなかった(他社の待遇が良くなかった)ということと、そもそもSIerに就職するような人はざっくりいって真面目でギラギラしていない人が多く、ふられた仕事をコツコツこなすことに精一杯で転職などを考える余裕すらなかったということが理由だと思います。

まぁしかしこの仕事に自分が向いていないとか、好きではないということを早く認識できるのは素晴らしいことです。自分の素直な気持ちに蓋をして我慢するというのが一番バカバカしい。今なら選択肢も沢山ありますし、何か違うな〜と思ったらさっさと転職活動を始めましょう。もちろん個人の趣向が最も重要ですが、早めに方向転換するならお勧めは下記です。

  1. 他に興味のある業界がある人;その業界のどんな職種でもいいから潜り込む
  2. 技術的なスキルを身につけたい人:メガベンチャーのTech職(あくまでメガベンチャーで本当のStart Upは勧めない)
  3. ビジネス寄りのスキルを身につけたい人:自分が顧客から直接受注できる営業職(会社はどこでもいいけどまぁリクルートとか王道かなと思います)
  4. 海外に行きたい人:MBAもしくは語学でもいいので留学
  5. 一発逆転したい人:起業

 新卒数年での転職となるとまぁ殆どの人にとって実績と言える実績はないわけで、この数年はサンクコストとして捉えた方が無難です。要するに新卒カードを間違えて使ってしまったということなので。そこは謙虚に受け止めてゼロから早めに自分にフィットした業界、業種を選びましょう。

 

 

 

 

SIerの提供している価値ってなんなのか?

色々Disられることの多いSIerですが、私からするとDisっている人はSIerへの期待値というか存在意義を誤解している人が多いです。日経ITの木村さんなんかその典型で、ITという枠で諸々ごっちゃにして変な比較対象を持ってきてSIerを批判するので頓珍漢な言説が多くなります。 

SIerが顧客に提供している付加価値は、「システムの開発や運用を担う人的リソースのアウトソーシング」です。SIerは完璧なシステムを提供してくれるベンダーではないし、SaaSを提供するベンダーやB2CのWebサービス企業と技術力などを比較するのは根本的に間違っています。SIerの収益モデルが人月ベースでダメだとかいう人がいますが根本的にピントがずれていて、提供価値はシステムじゃなくてシステム開発という領域に特化した労働力なのでそりゃ人月ビジネスになるに決まっているのです。これは顧客が明確な仕様に基づいた、双方に誤解のない「発注」をできるようになれば話は別で、システムベンダーとして成功報酬型の契約などを結ぶことも可能になるでしょう。ですが、実際問題として顧客側がきちんとした「発注」を定義できないので、SIerのような人材提供サービス業が成立するのです。

SIerが担っている業務は、本来全て顧客企業のシステム部門(もしくは各部門に配置されたシステム担当人材)が行うべきことです。それぞれのビジネスにどのような仕様のシステムが必要なのかを最も理解し、仕様を管理しているのはその企業の従業員であるべきですし、これはWebサービス系の企業の中でやっていることと同じです。PdMがWhatを決める、Tech teamとDesignerがHowを考えて実現する、カスタマーサクセスがProductのValueを高めていく、という一連のプロセスが通常は企業内で完結しています。アウトソースすることもあるでしょうが、PdMの機能を外出しすることはあまりないでしょう。

 ただ、歴史的にそもそもITが提供する付加価値と直接的には紐付いておらず、主にコスト削減のためにITを活用していた企業も存在しています。そのような企業からすれば、ある程度固定されたオペレーションを回すために巨大な情報システム部門を内部に抱えるというのは現実的ではないので、外部にアウトソースするというのが最適解になるわけです。これがSIerが世の中に存在する意義です。

 

 

SIerの新人はどんな業務を担当するのが理想なの?

新人の業務系SE社員にとって理想的な環境は、既存のある程度大きなシステムの機能追加案件にアサインされることだと思います。理由は二つあって、一つ目は類似領域の案件を複数回できるので経験の抽象化がしやすいということ。二つめは最初からある程度高いスタンダードに触れることができるということです。逆にいうといきなりコンサル的な案件に入るとか、小規模なToolを色々な顧客に導入しまくる案件というのはあまり良くないと思います。

一つ目の理由について、既存のシステムが大きいとその仕様をベースとして機能追加するので、ある程度案件に類似性が出てきて仕様としてもパターン化されます。そういう案件を複数経験することでなんとなく押さえておかなくてはいけないところ、例えばデータのモデリングがやっぱり肝心だなとか、既存の重要なJOBとの依存関係をチェックしないと大変なことになるなとか、他の案件でも展開可能なノウハウを積み重ねることができます。自分にとって完全に新規の業務とか、新規サービスのシステムなんかはある程度開発プロセスの抽象化ができて自分なりの勝ちパターンができてからでないと、関係者の意見に振り回されて結果QCDどれかが毀損するということになりかねません。

二つ目の理由について、既存のシステムが大きくて継続発注につながっているような場合は、ローンチ当初はともかくとして、既にある程度その案件自体は成功しており、顧客の業務が回り始めているということです。そのような案件は、アーキテクチャ的にも、顧客とのコミュニケーションを含めた開発プロセスも、品質水準も、運用プロセスもある程度高いレベルにあることが多いです。そうするとその母体を作り上げるスキルまで身につくかどうかは別にしても、「これが普通なんだ」と認識する諸々のレベルが自然と高くなり、勘違いをしなければ別の案件に移っても高いスタンダードを維持ことができます。もちろん何でもかんでも前のやり方を押し付けてはダメなわけですが、ぶっちゃけ作ってお終いのプレハブ工事のようなシステムの世の中には沢山あり、そればかりを経験していると自分のスタンダードが「そんなもの」になってしまいます。これは別にSIの世界に限った話ではなく、何事も一流の仕事に触れないとそもそもその水準の仕事が存在することも知り得ないわけで、なるべくレベルの高い現場に潜り込むことが重要です。

 

SIerに残る人が動かない理由はなんなのか?

SIerに長年居続ける人がなぜ転職しないかと言うと、以下のような感じでしょうか。長年=10年以上ぐらいのイメージです。

  1. 関わっているシステム・業界が好きだから
  2. システム開発の仕事が好きだから
  3. 周りにいる人が好きだから
  4. なんとなく嫌いじゃない/めんどくさくて考えていない
  5. 外にポジションがないから
  6. 外に出ると待遇が下がってしまうから

これはSIerの中でも所謂一次受けをしているTier-1的な企業なのか、中間レイヤーに属している会社なのかで結構異なってくると思います。私は1次受けの企業に所属していたのですが、感覚的には1-4が合わせて70%, 5,6が合わせて30%ぐらいの感じでしょうか。もちろんこれも長年在籍していると言っても、その人の年齢、ポジションによって変わってきます。

SIerの開発部隊で辛いのは課長〜部長ぐらいの売上に責任を持ちつつデリバリーも見なくてはいけないポジションで、特に課長レベルがキツい気がします。別に給料も良くはないですしね。事業部長以上になってしまうと基本的に大した意思決定はしていなくてリスクも取っていないので後はぶっちゃけ運じゃないかなーと思います。まぁ部長ぐらいまでいくと外に出てもおそらくアップサイドがほとんどないのでそのまま会社にサラリーマン人生を委ねる感じになりますね。

私が観測した限りですが、SIerは拘束時間などは結構ハードな部分もありますが、現場でプロジェクトを回している人なんだかんだ結構楽しんでいるんじゃないかと思います。私も割と楽しかった記憶が多いです。このあたりなぜ「SIerの仕事は割と楽しいのか」「どんな人に向いているのか」というのは別のエントリにしたいと思います。