SIer辞めてどこ行くの?

SIerが嫌になったら脱出することはできるのか?どんな逃げ道があるのか?というかSIerってそんなにダメなのか?

SIer出身者に向いているPosition 02:コンサル - デジタル部門

所謂戦略コンサルの中でもわざわざデジタルとかDXと名がつけられている部門はSIerからの転職先としてお勧めです。理由はこういった部署に求められる

  • 大企業の課題に対する
  • ITの深い理解を土台とした
  • 解決策の提案と実行のサポート

において、過去の経験を生かして付加価値が出しやすいからです。

こう言った部署のメンバーは様々なバックグラウンドの方がいますが、大きく分けると下記に大別されます。

  1. コンサルティングをやっていた人
  2. ITを使う側だった人
  3. ITを提供する側だった人

このバックグラウンドを持つ人は、それぞれに経験値上の得手不得手があります。コンサルティングを土台にしている人は課題解決のプロセス作りや過去に経験した業務領域のインサイトに強い一方で、ITの実装レベルの知識や大企業の置かれている情報管理の現状について理解が十分では無い場合が多いです(全員とは言いませんが)。2のツールを使う側というのは、具体的にはB2BSaaS/Software Providerでエンジニア以外の仕事をしていた人や、デジタルマーケなどITを使ってビジネスを回す側だった人などを指します。こう言ったバックグラウンドの方は経験のある領域の課題解決と技術には強いのですが、経験のあるSolutionの実装レベルの技術に知見があるわけでは無いため、ITを使って何ができて、逆に何ができないのかの根本的な理解はそこまで深くない場合が多いと感じます。そのため、自分が経験を積んできた領域であればいいのですが、新しい業務領域の問題解決は不得手とする傾向があります。3のITを提供する側だった人の中には自社プロダクトの開発に関わっていたエンジニアやPM,そしてSIerの開発部隊などが含まれます。SIerの社員は一般的に自社プロダクトを開発しているエンジニアより技術力(特にトレンドになっている技術のキャッチアップ)に劣るというイメージがあり、実際それは正しいと思います。理由はそもそもその部分を業務として求められていないからです。一方でSIerの経験上の強みとしては、実際にコンサル会社に発注するようなB2Bクライアントの社内システムおよび情報システム部門の実情がよくわかり、彼らの意思決定のプロセスや傾向も垣間見ることができるということです。この経験上のアドバンテージをうまく利用してポジションを築ければ、コンサルのデジタル部門で活躍することはそれほど難しくありません。SIerにいる方で現状に満足されていない方(特に若手の方)は第一の選択肢としてコンサルのデジタル部門を検討してみてはいかがでしょうか。

SIer出身者にお勧めのPosition 01:外資系戦略コンサルタント

このBlogの趣旨はSIerからのキャリアチェンジなので、次はSIer出身者に向いている社外のPositionを紹介していくことにします。1番目はみんな大好き外資コンサルタントです。「そんなかっこいいところ無理だよー」と思った方もいらっしゃるかと思いますが、そんなことはありません(多分)。私の知る限りでもSIerから所謂外資系のカッコいいコンサルティング会社に転職した人は10人以上いますし、実際私もMBBと言われている会社の1社からオファーをもらったことがあります(諸事情により行きませんでしたが)。

コンサルタントをお勧めする主な理由は下記になります。

  1. ITに関する素養を生かせれば比較優位を持ちやすい(ポジションを作りやすい)
  2. SIerの現場では見えにくい「商売」の色々な側面に触れることができる
  3. 案件サイズが小さい(金額ではなく工数的に)のでPM難易度が低い
  4. 実力さえあればPromotionが早い
  5. 国外オフィスにスライド異動できるケースもある
  6. 給与が高い

特に20代前半〜後半でSIer の業務に物足りなさを感じているような方は非常に向いていると思います。業界が拡大傾向にあること、それもDXなどのトレンドと相まってシステム開発やソフトウェア開発が伴う案件が増えていることなどからSIer出身の方でも入社後に価値が出せる可能性が高まっていると思います。まぁ面接もある種独特で所謂転職偏差値的なものは非常に高いのだと思いますが、コンサル会社に強いエージェントもありますので相談しながらきちんと対策しておけば大丈夫です。人間の知力の個体差なんて実際はほとんどなく、似た問題を繰り返し考えているかいないかでOUTPUTのスピードが決まっているだけです。なので面接で聞かれそうなことを繰り返し自分の頭で考えて、場面場面に応じた思考回路を作っておきさえすれば、すぐに期待通りのDiscussionはできるようになります。

なお、タイトルにはよく見かける表現に合わせて「戦略コンサルタント」と書きましたが、所謂外資系のコンサルティング会社は「事業戦略」的な案件だけをやっているわけではありません。私は外資系企業で何度か発注者側としてお仕事を一緒にしたことがありますが、大枠の戦略は自社で考えていていくつか抜けているパズルのピースを埋めてもらうような発注の仕方が多かったように思います。またコンサルティング会社に勤める友人に話を聞いていても、知恵を絞って戦略を捻り出すというよりも、後方実行支援というか、色々な意味で現場のManegerをサポートするような仕事が多いようです。それ自体は素晴らしいことだと思うのですが、外部から転職しようとする人は過度な期待というか派手なイメージを持っていることも多いので気をつけてください。

SIerの営業ってどうなの?

まず結論から。端的に言ってSIerの営業職はお勧めしません。特に新卒で営業配属された人ははっきり言って時間の無駄ですので、余程それがやりたい仕事でない限り早く逃げ出した方が良いです。念のため前提を書いておきますが、私は営業と言う職業を尊敬していますし、企業の中で最も必要不可欠な機能は営業だと思っています。営業職そのものをお勧めしないと言うことではなく、営業職を追求するとしてもSIerの営業は良い居場所ではないと言う意味です。理由はシンプルで、SIer では営業としての成功/失敗体験を積むことができないからです。IT業界で営業をやりたいのであれば、SIerではなくSaaSなど比較的導入のハードルが低いベンダーの営業になることをお勧めします。

そもそも営業というのは何をする仕事でしょうか。私個人の営業の定義は、「お客様に提案をして、商品を買ってもらうこと」です。この定義は前半部分が重要で、提案をしていない人は受注していても営業をしているとは言えません。それは事務作業です。そして自分の提案に対する顧客からの拒絶/受容の反応を経験することによって、営業スキルが磨かれていきます。営業として成長するためには、売るべき商品を手にした時に正しい問いを持ち、それに対する自分の答えを提案に反映し、顧客からのフィードバックを受けて自らの行動を修正していくことが必要不可欠です。正しい問いとは、例えば下記のようなものです。

  • この商品を必要としているのはどんな人なのか?
  • 彼らは何を実現するためにこの商品を必要としているのか?
  • 彼らはどうやって自身の目的の実現にこの商品が役立つと判断するのか?
  • 彼らが他社の商品ではなくこの商品を選ぶとしたら、その理由はなんなのか?
  • 彼らがこの商品の購入を決めるために超える必要があるハードルは何か?

SIerの営業職の問題は、この提案→拒絶/受容の経験を頻度高く積むことが難しいこと、そして上記のような問いに対する答えを営業個人が持ちにくいことにあります。企業規模にもよりますが、SIerが受注するような案件は数千万〜数億円規模になることが普通です。IT業界外の多くの企業にとって、システム開発及びその発注は高い頻度で経験することではありません。まずここで頻度の問題が出てきます。そしてシステム開発の提案は本来顧客の業務と技術に対する深い理解がなくてはできないため、開発経験がない人間ができるものではありません。そのため、SIerの営業で開発経験がない方の業務内容はクライアントとのスケジュール調整(提案のできる開発teamとの打ち合わせなど)、開発からもらった見積の顧客への受け渡し、クレームの一次受付、法務と顧客との契約文章の橋渡し などの業務になっていきます。社内のマネジメントとは受注見込みなどのやり取りもするでしょうが、そもそも自分が提案しているわけではないので受注確率を上げるためのドライバーを持っていません。こういった状況は営業として悲劇としか言いようがなく、SIerの営業として経験を積んでも根本的な営業スキルは何も身につきません。連絡スキルが上がるだけです。もちろんSIerにも優秀な営業の方はいて、案件を自身の考えで提案して受注する方もいると思います。が、それはその方が自身でSIerの営業という不利な環境を跳ね返せるだけ優秀ということであって、仮に彼らが別のより営業スキルが活かせる/磨ける環境にいれば、遥かに大きな成果や成長を遂げられたと思います。

SIerで営業職についてる方、特に20代の方。まだ間に合います。早く逃げましょう。

 

外から見るとSIerのどこがダメなの? ビジネスパートナー編

SIerはビジネスパートナーにとってはどう見えているのでしょうか。SIerというのはよく言われるように構造的には建設業界に近く、業務内容がほぼ被っている企業が規模別にレイヤー化されています。この手の業界では上位のプレイヤーが順次下のレイヤーに仕事を流すことで取りまとめて大きな規模のProjectを元請けが実行できるという形で機能しています。こういった構造は一見不合理に見えますが、システム開発をはじめとしてこれらの業種が請負うプロジェクトは、クライアント企業の中ではバックエンドの位置付けであるため、大企業になればなるほど丸投げできる先を求める力が働きます。そのため、パートナー企業としての安定性=与信も重要になります。実際例えばエンジニアを抱えている小さなソフトウェアハウスとの契約を直接管理するのは社内のリソースコストがかかりますし、トラブル発生時の対応もまとめて引き受けて欲しいため、Top TierのSIerが必要になったのです。

こう言った背景から、ビジネスパートナー=下位レイヤーのSIerはこのTop Tier企業の発注の受け皿として、たくさんの企業が乱立しました。実際に彼らのやっていることはこれまた建設業と同じくより現場寄りのPM(というか現場監督)とエンジニアの人材派遣業で、コストはほぼ人件費のみなので一度Top Tierから大型案件を受注して現場に入り、仕様や運用の詳細を抑えてしまえば継続的に受注が期待できるため、上手くコネクションさえ作れればある程度安定性の高い経営が可能な業態ということができます。

ビジネスパートナーの従業員から見たSIerの評価は「実装する技術力もないくせにスケジュールと見積もりでPMごっこだけしているくせに給料は俺たちよりいいのでクソ」というぐらいでしょうか。お気持ちは非常によくわかりますし、一つの真実だと思います。ただし私の経験で言うとやはり企業のレベルによって人材の一般的な質もそれなりに相関している感覚があり、実際の開発現場により近い下位レイヤーのSIerの方々にSharpな人が多かったかと言うとそんなことはないように思います。それぞれFocusしている部分が違うので、開発に近い方はハードウェアに近いと言う意味でより低レイヤーなスキルが高く、一次受けの社員は顧客との距離が近いためよりソフトスキルFocusな存在であると言えます。

SIer後のキャリアパスはどんなものがあるの? 業務SE/PM 30代後半編

30代後半でSIerを辞めようと思った貴方!もう無理です。というのは嘘で、厳しくはなりますが思い立ったが吉日なのでさっさと辞めましょう。貴方の年齢であれば選択肢は広くはないですが、ゼロではないです。ゼロではないというのは絶対無理ではないという意味で実際に転職できるかどうかはもちろん貴方次第ですが。

30代後半というとチームを持ち、売上を立て、自分のキャリアの中でのハイライト的な案件もあるでしょう。この後のキャリアパスは大きく下記ぐらいです。

  1. 一般企業のIT部門(特にクライアント)
  2. 外資ITベンダー
  3. 外資Webサービス
  4. コンサル
  5. 独立(フリーランス or 起業)
  6. SIと全く関係ない元々やりたかった夢を追う系

30代前半と比較して選択肢から落ちたのは国内メガベンチャーと同業他社です。理由は国内メガベンチャーはまず役員層かその一歩手前ぐらいしか30代後半以降の居場所がないことです。厳密に言うとポジションによっては居場所自体はありますが、入った後にPromotionする可能性が低く、待遇がよくなっていかないのでお勧めできません。同業他社も理由は同様で、Promotionする可能性が現状に比べて低くなるからです。特にPromotionを求めていなくて、上のTierの同業他社に入れて年収が上がる場合は選択肢に含めて問題ありません。

ここまでくるとベストは1で、企業規模はともかく今までの経験を生かして情報システム部門でTOPまで行くつもりでできれば経営層から請われて移籍するような形が理想です。ただそんな人はここを見ていないと思うので現実的には2, 3がお勧めです。特に2は今まで多く取り扱っていたプロダクトもあるでしょうから、その経験を生かして太いクライアント を手土産にSalesにJoinするとか、Solution Consultant的なPositionで居場所を見つけるとか、やりようはある気がします。コンサルはいわゆるコンサルタント的なRoleでJoinするのは現実的ではなく、あくまでSIerの延長線上でPM的なRoleで入るなら活躍の場はあります。Consultantって一定以上大きなProjectのPMができる人そんなに多くないので。

独立はフリーランスだと現時点ではそこそこやりやすいはずで、年収が劇的に伸びるケースもあるようです(SAPのフリーコンサルとかですね)。SIer出身者がSIerで起業すると言うのはあまり想像がつかないので(無駄に大変になる割に儲からないので)、フリーランスで十分に仕事が取れる見込みが立てば独立を考えるのも良いでしょう。ただそうは言っても30代後半だと通常は後20年そこそこは働くわけで、長期的な自分の競争力を冷静に判断して踏み切ることをお勧めします。

 

 

外から見るとSIerのどこがダメなの? ユーザー目線編

SIerに対する不満, Dis意見のうちユーザー目線のものをPick upしてみましょう。ここで言うユーザーとはクライアント企業の中でSIerが納品したシステムを実際に使って業務を行う人のことです。例えば私はコールセンターのオペレーターが使う受発注のシステムを開発していましたが、ここで言うとそのオペレーターさん達がユーザーということになります。SIerの業務の本質的な難しさは、顧客内でも発注いただく情報システム部門の社員の方々、上記のようなユーザーの方々、そして経営層と複数のステークホルダ間で求めるものが食い違うケースが多いことです。

今私は職務としてPdMをやっているのですが、この問題は自社Productを開発している企業でも同じことが起こり得ます。PdMは社内である意味Tech teamに対する発注者の役割を果たすわけですが、ユーザーはもちろんPdMではありません。そのためPdMが考える優先順位や使い勝手が実際のユーザーの感覚と一致しておらず、思ったような反応が得られないということが起こります。これは上記の情報システム部門と企業内のユーザーの関係と似ています。PdMと情報システム部門の異なるところは、

  1. 情報システム部門は企業内のユーザーとコミュニケーションをとるチャンスが外部ユーザーを扱うPdMに比べて多い
  2. PdMは場合によってはユーザーに加えてカスタマー(お金を払ってくれる人)の課題を解決する必要がある
  3. 情報システム部門の扱うシステムは社内組織の力関係に仕様が左右されることがある

というところです。

前置きが長くなりましたが、システムを業務に使用するユーザー目線でのSIerへの不満はシステムの品質と納期に対する不満になります。品質面ではバグが多く業務がStopしてしまう、仕様がわかりにくい(使いにくい)というのが主要な不満で、納期面ではシステムのローンチが延期されるようなことがあるとそれに合わせて計画していた業務の変更に支障が出るというものです。バグは根本的にゼロにすることはできないので、如何にしてCriticalなものを出さないようにするか=テストのProductivityをどうやって上げるか がSIerの腕の見せ所になります。仕様のユーザビリティに関する品質はSIerの立場では踏み込むのが難しい場面もあるのですが、ここの品質を上げるためにユーザーや情報システム部門に対して踏み込んだ提案ができるようになると継続した案件も受注しやすくなります。

 

 

SIer後のキャリアパスはどんなものがあるの? 業務SE/PM 30代前半編

30代前半でSIerを辞めようと思った貴方!ギリギリです。さっさと辞めましょう。貴方の年齢であれば頑張ればなんとかなります。なんとかなるというのは絶対無理ではないという意味で実際に転職できるかどうかはもちろん貴方次第ですが。

30代前半というとそこそこキャリアも積んできているので(10年目〜ぐらい)、この後のキャリアパスは大きく下記ぐらいかと思います。

  1. コンサル
  2. 外資ITベンダー
  3. 外資Webサービス
  4. 国内メガベンチャー
  5. その他一般企業のIT部門(特にクライアント)
  6. 同業他社
  7. 起業

20代後半から選択肢として落ちたのはMBA, 国内スタートアップでその代わり入ってくるのが同業他社です。MBAは"絶対なし"というわけではないのですが、キャリアアップの手段としては30代以降はあまりお勧めしません。ここまできたらMBAというポテンシャルフラグではなく業務の実績で転職していく方が幸せになれます。コンサルになりたいという人も別にMBA必須というわけでは無いですし、わざわざ回り道する必要はないです。ただ、英語に不安があって業務外で英語漬けになりたいとか、トップスクールのブランドがどうしても欲しいとか、そういう明確な目的がある方は選択肢に含めても良いかと思います。

キャリアアップ(収入増)観点では上記の中でお勧めは3>2>1>4です。すぐに年収が上がるのは1なのですが、コンサル以降のキャリアを意識している場合はあまりお勧めできません。通常は30代前半でコンサルにjoinしていきなりmanagerにはならないと思いますので、コンサルタント/アソシエイトのレベルでスタートすることになります。仮にpromotionするのに3年かかったとして、数年managerレベルの経験を積んだ時点で次のキャリアを考えると少なくとも30代後半になります。コンサルのいわゆるmanager positionは事業会社のmanager職とは異なりproject manager色が強いので、残念ながらマネジメント経験を積んだとは言えません。その意味でコンサルをビジネススキルの習得期間とか、キャリアの高速道路的に捉えるのは30代以降は難しいと思います。また、コンサルでの経験はアサインされるプロジェクトにかなり依存するので、例えばシステム開発のPMOなどを続けてしまうと結局自分の実績としてアピールできる経験が大して積み上がらないので注意が必要です。

 逆に3の外資Webサービスは選択肢を広げていく意味ではお勧めです。最初からGoogleのようなTop企業に入れなかったとしても、小さくて業績が好調で面白いチャレンジができそうな会社にjoinして、他者から見ても目立つ自分の実績と専門分野を作っていければどんどんステップアップしていく(Positionも、企業も)ことは可能です。一点だけ注意があるとすればマネジメント層に行く場合は結局英語が重要になるので、ネイティブレベルになる必要は必ずしもないですが、不自由なくビジネスの議論ができるレベルにはいる必要があります。