SIerでキャリアを積み重ねるとどうなっていくの?
SIerで業務系SEとして経験を積んだ後は、そのままずっとある業務のスペシャリストになることは稀で、典型的なパスとしてはエントリーレベルからPMにシフトしてキャリアを積むことになります。PMとして業務を始めると後は結構シンプルで、順々により大きな、より難しそうな案件にチャレンジしていき、それに伴って職位が上がっていく(課長→部長→事業部長→役員のようなイメージ)ということが多いです。太客の同じ業務に関連する仕事をずーっとやり続けるという人も中にはいるのですが、まぁあんまり多くはなくて、隣接する業種のクライアントに移って少しづつ経験領域を広げていく形が一般的です。 PMは割と汎用性の高いスキルで対象の領域が変わっても割となんとかなるんですが、エントリーレベルのPMは業務系SEを兼ねることが多く、業務系SEの職務内容は自分の中できちんと抽象化ができていないと違う領域に移ったときにノウハウが生かせなくて苦労するようです。
上記は業務系SEを出発点にした人の1典型的なパスの話で、その他にもいろいろなパスが存在します。例えば技術系SEの場合はアーキテクトとか環境構築系のスペシャリストとして残る人もいますし、特定のプロダクトの生き字引みたいな方向性でポジションを確立する人もいます。技術系の人の中にもPMパスで生きていく人もいて、顧客への説明の際にアーキテクチャ部分だけやけに熱のこもった提案をしたりもします。もちろん運用保守や品質管理などの専門家になる人もいます。
- 巨大な顧客の既存システムに配属されてSE→PMのパスを辿りグングン案件サイズがデカくなる
- 技術系のSEとしてやりたい分野を定めてとにかくそこを極める→社内外でのプレゼンスが上がり、ポジションも上がる
- 新しい業務 or 技術トレンドの領域の経験をいち早く積んで、社内(できれば業界の)第一人者として横展開して稼ぎまくる
ぐらいです。3を実践して出世した人は知っていますが、結構レアケースですね。やっぱり1がマジョリティな気がします。
後はまったり行きたいと思ったら開発プロセスの中では割と地味目なFunctionのスペシャリストになって、淡々と色々なプロジェクトに行って傭兵的な仕事をこなす、というのもあります。PMOとか品質管理とかでしょうか。
現在は社外からの技術に対する評価が昔とは全然異なってきているので、SIerの中のキャリアパスも変わっていくんでしょうね。
なぜSIerに飽きない人がいるのか?
似たようなジャンルの仕事を繰り返すことは、確かに飽きてくる場合もありますが、それ自体が専門性を高めるために必須のプロセスです。内容が100%同じということはありえないので、微妙に違うけれども似たような案件を繰り返しこなしていく中で、自分の中で少しづつ抽象化して勘所が掴めてきて、特にリスクがどこにあるか、どうやって大惨事を避けるかが感覚的にわかるようになってきます。これがプロになるということ。負けに不思議の負けなしってやつです。
じゃあ「飽きてしまう」とどうなるかというと、専門性がそれ以上高まりません。なので「飽きる」=「この分野でこれ以上専門性を高めても面白くなさそうだと思ってしまう」ということなんだろうと思います。その点、前のエントリで挙げた広告業界なんかは人の目にも触れて派手ですし、「もっといい仕事しよう」と思えるので飽きないんでしょうね。
SIerにいる人も同じで、もっとうまくProjectを回すことに面白みを見出せる人は、飽きないんだと思います。こればっかりは個人差があるかなと。あと広告業界との違いでいうと、SIerのProjectって成功の定義が「問題がないこと」なんですよね。広告は自分が関わった案件が世間で評判になるとか、何か広告関連の賞をもらうとか、顧客の売り上げが爆上がりするとかそう言ったプラスの結果が起こることがありますよね。SIerのプロジェクトはこう言ったプラスαの評価だったり成果を実感する機会に乏しいので、そこはマイナスポイントかもしれません。世間的に大きなインフラに関わったとか、ニュースに取り上げられたとか、それぐらいですかね。ただ、どちらかというと銀行のシステム改修でATMが止まりましたとか、年金のデータがどこかにいっちゃいましたとか、トラブルで取り上げられるケースが多いように感じます。 なのでSIerに向いている(飽きない)人は、派手な成果を求めているわけではなく、トラブル耐性が強い人=基本的にドM?なんじゃないかな〜と思います。ま、そんな雰囲気全くない人もいますけど。
なぜSIerに飽きたのか?
せっかくなので私が(偉そうにも)飽きたと思ったポイントを上げておくと、結局何回か開発のプロセス(waterfallであれagileであれ)を経験してしまうと、あとは管理する情報と連携するシステムが違うだけで、大きな目で見ると同じことの繰り返しだなーと感じたからです。
いわゆるSIerが担当するようなシステム開発というのは、ざっくりいうと
- 対象業務
- 対象データの規模感
- アーキテクチャ
ぐらいで大体パターンが決まってしまいます。通常企業がSIerを使って導入するようなシステムは実際そんなに大して難しいことはしていなくて、要するに色々な所からデータをinputして、整理整頓して保管して、算数レベルの計算をして出力する(ブラウザなどに表示するとか、外部システムに連携するとか)ってことをしているだけです。もちろんサイズが大きくなるとProject managementの難易度は桁違いに上がりますし、tech系のSEであれば新しいアーキテクチャを試して抜群の性能を目指すとか色々とワクワクポイントはあるわけなのですが。正直業務系SEだと慣れている業務を担当すればマンネリですし、慣れない業務を担当すると要件を見逃したりして炎上する確率がうなぎ上りになるので、ベテランになるに連れてそのどちらかを選ぶ形になります。
でも考えてみればこれって例えば広告業界とか建設業界とか、プロジェクト型の業界ではどこもでもほとんど同じことです。広告業界の人とか飽きるってあんまり聞かないけどどうなんでしょうね。その点コンサルなんかはある程度パターンがあるとはいえ適度に毎回顧客もテーマも変わって新鮮なのでしょう。
なぜSIerが嫌になるのか?
SIerが嫌になる理由は皆それぞれなのでしょうが、大きく分けるとこんなところでしょうか。
- 業務に飽きた
- 発注側の仕事がしたい
- 自社サービスを作っている会社でシステムを作りたい
- 技術面で成長したい
- 給料を上げたい
- 拘束時間の短い仕事がいい
- もっとかっこいい仕事がしたい(コンサルとか?)
- 周りの人が嫌い
- 今の会社で出世が見込めない
- 他に全然違う業界でやりたいことがあるのに気がついた
私は1がメインの理由でしたが、周囲で辞めた人は4,5,7,10ぐらいが多かったように思います。10は新卒ですぐに辞める人に多かったですね。早めに気がつくのは素晴らしいことで、自分の居場所じゃないなと思ったらさっさと辞めるのが正解だと思います。最近は4で辞める人も多いのかな?技術力と待遇が割とリンクする世の中になってきましたからね。他にも嫌だと思う理由があれば聞いてみたい。
まず主語がデカすぎるのでは?
IT業界というのも広すぎるんだけど、SIerとかSI業界というのもまぁ随分と大雑把な定義で。他業界を見ても例えば飲食業に従事している人の中には星付きレストランのシェフもいれば、ロードサイドのチェーン店の店舗システム担当まで色々いるわけですからね。
業界に属している法人という切り口にすると、業界横断で共通のFinanceやHRといったFuntionに従事している人も含んで全体像がぼやけてしまうので、ここでは所謂SIerの扱うプロジェクトの営業から納品に直接関わる職種を対象としていきます。
SIer自体ITゼネコンとか呼ばれたこともあったように、実態は結構建設業に似ているところがあり、その中にも色々な人種が存在します。ざっくり分けると
- Project Manager: なんとかする人
- 業務系SE: 何を作るのか顧客と決める人
- Tech系SE: どうやって作るのか決める&実際作る人
- 品質管理スペシャリスト: SEが適当にやってないか見張る人
- 運用保守スペシャリスト: 作ったものを使えるようにサポートする人
- 営業: 顧客と飲み会する人
- 偉い人: 顧客に怒られる人
こんなところでしょうか。何かミスしていたら教えてください。Tech系SEは性能とかサイジングとかアーキテクチャとかもっと細かく分かれますがまぁざっくりこんななもんかなと。偉い人はちゃんとPMしている事もあるし、何にもわかってなくてたまに来て適当に顧客と話して帰るだけのこともあります。この辺は顧客と案件のサイズ次第ですね。
私は業務系SEからPMへ進むというごく一般的なパスでしたが、上記はそれぞれに難しさも面白さもある職種だと思います。
IT業界の痰壷から
IT業界という言葉も今や金融業界みたいな感じで真に玉石混交な感じになってきたと思いますが、それでも所謂SIerと言われる企業群はIT業界の中でまぁなかなかに酷い扱いを受けています。
大手SIerの中高年社員の「自分探し」が深刻になってきたらしい。以前は役職定年前後の人たちの問題だったが、今では40代でも「このまま歳を取ったらどうなる」と不安を覚える人が急増中。スキルに自信が無い技術者や元技術者が特に深刻で「老年になっても働け」との社会のムードに不安を覚えるらしい。
— 木村岳史(東葛人) (@toukatsujin) February 13, 2019
私はSIerからキャリアをスタートして、フラフラした後今は某企業でProduct Managerをやっている身なのですが、まぁ上のオッサンはイデオロギーガチガチなのでほっとくとしても結構色んなところでDisられててなんだかなぁと。中の人は全然気にしてないかもしれないけどね。
中と外を両方知っている身として、SIerの良いところと悪いところ、SIerからのキャリア構築なんかをメモして行こうと思います。