SIer辞めてどこ行くの?

SIerが嫌になったら脱出することはできるのか?どんな逃げ道があるのか?というかSIerってそんなにダメなのか?

外から見るとSIerのどこがダメなの? 顧客視点編

Disられることの多いSIerですので、社員の観点だけではなく外の視点からもどこが批判されるのか、各ステークホルダーの観点からみてみましょう。関係する人は下記のような感じでしょうか。 

  1. 発注者の立場
  2. エンドユーザーの立場
  3. ビジネスパートナーの立場
  4. 競合の立場
  5. 投資家の立場
  6. 世間一般の立場
  7. 業界ウォッチャーの立場

まず今回は1番重要な顧客=発注者の立場から考えてみます。一口に顧客といっても色々なレイヤーの人がいるのですが、ここでは納品するシステムを実際に使って業務を行うエンドユーザー(上記の#2)とは分けて、SIerに対する発注者になる企業のIT部門の中の役員から担当従業員までを対象とします。

彼らの持つSIerへの不満の原因のうち典型的なものは

  1. 予算の必要性に対して説明が十分に出来ず、社内で責められる
  2. システムの仕様がユーザー部門の要求を満たしておらず、社内で責められる
  3. GO LIVEになった後トラブルが起こり、社内で責められる

と言ったところでしょうか。SIerへ発注する部門(多くは情報システム部門)の本音は、「これだけ大きな金額で発注しているのだから全部丸っと上手くやってくれ」ということだと思います。が、それはそもそも無責任というか職務放棄に近いスタンスですし、その発想自体システムというものの特性を理解できていないから出てきてしまうものです。ソフトウェアというのは(ハードウェアに比べれば)設計を比較的柔軟に変更できるというだけのものであって、仕様に基づく製品の動作という意味ではソフトでも何でもなく、設計されていないことには何も対処出来ません。言い換えれば100%のカバレッジと精度で仕様を定義できなければトラブルが発生することは不可避であり、ある程度以上複雑な業務について人間が完璧な設計を行うことは現実的ではありません。ですので上記の2,3は程度問題であり、ある程度以下の品質であれば当然SIerが責められるべきですが、100%を求めるのは発注者の姿勢として間違っています。そうではなく、どこが適切なコストと品質のバランスなのか、どうやって品質が100%にはならない中で効果的にシステムを使っていくのかを考えるべきです。

一方で、1についてはSIerの責任も非常に大きいというのが私の意見です。一般的にSIerは、開発にかかる工数や、使用するハードウェア、ソフトウェアの費用などを積み上げてコストの内訳を出し、なぜこの機能にこれだけのコストかかるのかという説明を行うことが多いのですが、これは効果的な顧客のサポートになっていません。本来SIerがやるべきなのは、「納品するシステムがどれだけ投資以上の価値を"生み出す"ものなのか」という顧客のビジネスケース作成に対するサポートと、その価値を最大限引き出すためにどのような体制を構築して、どうやってユーザーを巻き込むべきなのかを提案することです。それこそが直接の顧客である情報システム部門が顧客企業の中で提供する価値だからです。私が知っている限りではこれができているSIerの営業は非常に稀で、社内でコンサルを行なっている部署もほとんどできていません。「じゃあ他の業界の営業はこれができているのかというと」まぁそんなこともないわけですが、SIerへの発注は一般に金額がかなり大きなものになるので、ビジネスケース作成のサポートは顧客の発注意思決定上も決定的に重要な要素になります。ここが顧客目線で見た時にSIerの提供価値が足りていないポイントです。