SIer辞めてどこ行くの?

SIerが嫌になったら脱出することはできるのか?どんな逃げ道があるのか?というかSIerってそんなにダメなのか?

SIer後のキャリアパスはどんなものがあるの? 業務SE/PM 20代前半編

さてこのBlogのテーマはSIerからのキャリアチェンジなので、そろそろ本題にいきましょう。キャリアパスは職種と経験の長さ/現在のPositionによって異なってくるので、選択肢が変わってくる単位ごとに分けて説明していきます。

20代前半でSIerを辞めようと思った貴方!慧眼です。さっさと辞めましょう。貴方の年齢であれば所謂第二新卒的な扱いになるので基本的にどこにでも行けます。"行けます"というのは絶対無理ではないところが多いという意味で、実際に転職できるかどうかはもちろん貴方次第ですが。 

SIerに何を期待して就職したかにもよりますが、私の知る範囲で20代前半(3年以内)で転職していった人の行き先は

  1. 家業を継ぐ:意外とこれが多い
  2. Webサービス系:De●Aとかその辺
  3. リクルート:もっと目をギョロギョロさせて生きたかった人向け
  4. 外資金融:1人だけいました
  5. MLM:あちら側に行かれました
  6. 教員:元々やりたかった夢に戻る系
  7. 看護師:元々やりたかった夢に戻る系 

こんな感じです。同業他社はほぼいませんでした。まぁ慣れてくる前にSIという業種が合わなくて辞めるんだから当たり前ですね。こうやって振り返ると20代前半で辞める人というのは昔はほとんどいなかったように思います。これは今ほどTech系の人材がもてはやされていなかった(他社の待遇が良くなかった)ということと、そもそもSIerに就職するような人はざっくりいって真面目でギラギラしていない人が多く、ふられた仕事をコツコツこなすことに精一杯で転職などを考える余裕すらなかったということが理由だと思います。

まぁしかしこの仕事に自分が向いていないとか、好きではないということを早く認識できるのは素晴らしいことです。自分の素直な気持ちに蓋をして我慢するというのが一番バカバカしい。今なら選択肢も沢山ありますし、何か違うな〜と思ったらさっさと転職活動を始めましょう。もちろん個人の趣向が最も重要ですが、早めに方向転換するならお勧めは下記です。

  1. 他に興味のある業界がある人;その業界のどんな職種でもいいから潜り込む
  2. 技術的なスキルを身につけたい人:メガベンチャーのTech職(あくまでメガベンチャーで本当のStart Upは勧めない)
  3. ビジネス寄りのスキルを身につけたい人:自分が顧客から直接受注できる営業職(会社はどこでもいいけどまぁリクルートとか王道かなと思います)
  4. 海外に行きたい人:MBAもしくは語学でもいいので留学
  5. 一発逆転したい人:起業

 新卒数年での転職となるとまぁ殆どの人にとって実績と言える実績はないわけで、この数年はサンクコストとして捉えた方が無難です。要するに新卒カードを間違えて使ってしまったということなので。そこは謙虚に受け止めてゼロから早めに自分にフィットした業界、業種を選びましょう。

 

 

 

 

SIerの提供している価値ってなんなのか?

色々Disられることの多いSIerですが、私からするとDisっている人はSIerへの期待値というか存在意義を誤解している人が多いです。日経ITの木村さんなんかその典型で、ITという枠で諸々ごっちゃにして変な比較対象を持ってきてSIerを批判するので頓珍漢な言説が多くなります。 

SIerが顧客に提供している付加価値は、「システムの開発や運用を担う人的リソースのアウトソーシング」です。SIerは完璧なシステムを提供してくれるベンダーではないし、SaaSを提供するベンダーやB2CのWebサービス企業と技術力などを比較するのは根本的に間違っています。SIerの収益モデルが人月ベースでダメだとかいう人がいますが根本的にピントがずれていて、提供価値はシステムじゃなくてシステム開発という領域に特化した労働力なのでそりゃ人月ビジネスになるに決まっているのです。これは顧客が明確な仕様に基づいた、双方に誤解のない「発注」をできるようになれば話は別で、システムベンダーとして成功報酬型の契約などを結ぶことも可能になるでしょう。ですが、実際問題として顧客側がきちんとした「発注」を定義できないので、SIerのような人材提供サービス業が成立するのです。

SIerが担っている業務は、本来全て顧客企業のシステム部門(もしくは各部門に配置されたシステム担当人材)が行うべきことです。それぞれのビジネスにどのような仕様のシステムが必要なのかを最も理解し、仕様を管理しているのはその企業の従業員であるべきですし、これはWebサービス系の企業の中でやっていることと同じです。PdMがWhatを決める、Tech teamとDesignerがHowを考えて実現する、カスタマーサクセスがProductのValueを高めていく、という一連のプロセスが通常は企業内で完結しています。アウトソースすることもあるでしょうが、PdMの機能を外出しすることはあまりないでしょう。

 ただ、歴史的にそもそもITが提供する付加価値と直接的には紐付いておらず、主にコスト削減のためにITを活用していた企業も存在しています。そのような企業からすれば、ある程度固定されたオペレーションを回すために巨大な情報システム部門を内部に抱えるというのは現実的ではないので、外部にアウトソースするというのが最適解になるわけです。これがSIerが世の中に存在する意義です。

 

 

SIerの新人はどんな業務を担当するのが理想なの?

新人の業務系SE社員にとって理想的な環境は、既存のある程度大きなシステムの機能追加案件にアサインされることだと思います。理由は二つあって、一つ目は類似領域の案件を複数回できるので経験の抽象化がしやすいということ。二つめは最初からある程度高いスタンダードに触れることができるということです。逆にいうといきなりコンサル的な案件に入るとか、小規模なToolを色々な顧客に導入しまくる案件というのはあまり良くないと思います。

一つ目の理由について、既存のシステムが大きいとその仕様をベースとして機能追加するので、ある程度案件に類似性が出てきて仕様としてもパターン化されます。そういう案件を複数経験することでなんとなく押さえておかなくてはいけないところ、例えばデータのモデリングがやっぱり肝心だなとか、既存の重要なJOBとの依存関係をチェックしないと大変なことになるなとか、他の案件でも展開可能なノウハウを積み重ねることができます。自分にとって完全に新規の業務とか、新規サービスのシステムなんかはある程度開発プロセスの抽象化ができて自分なりの勝ちパターンができてからでないと、関係者の意見に振り回されて結果QCDどれかが毀損するということになりかねません。

二つ目の理由について、既存のシステムが大きくて継続発注につながっているような場合は、ローンチ当初はともかくとして、既にある程度その案件自体は成功しており、顧客の業務が回り始めているということです。そのような案件は、アーキテクチャ的にも、顧客とのコミュニケーションを含めた開発プロセスも、品質水準も、運用プロセスもある程度高いレベルにあることが多いです。そうするとその母体を作り上げるスキルまで身につくかどうかは別にしても、「これが普通なんだ」と認識する諸々のレベルが自然と高くなり、勘違いをしなければ別の案件に移っても高いスタンダードを維持ことができます。もちろん何でもかんでも前のやり方を押し付けてはダメなわけですが、ぶっちゃけ作ってお終いのプレハブ工事のようなシステムの世の中には沢山あり、そればかりを経験していると自分のスタンダードが「そんなもの」になってしまいます。これは別にSIの世界に限った話ではなく、何事も一流の仕事に触れないとそもそもその水準の仕事が存在することも知り得ないわけで、なるべくレベルの高い現場に潜り込むことが重要です。

 

SIerに残る人が動かない理由はなんなのか?

SIerに長年居続ける人がなぜ転職しないかと言うと、以下のような感じでしょうか。長年=10年以上ぐらいのイメージです。

  1. 関わっているシステム・業界が好きだから
  2. システム開発の仕事が好きだから
  3. 周りにいる人が好きだから
  4. なんとなく嫌いじゃない/めんどくさくて考えていない
  5. 外にポジションがないから
  6. 外に出ると待遇が下がってしまうから

これはSIerの中でも所謂一次受けをしているTier-1的な企業なのか、中間レイヤーに属している会社なのかで結構異なってくると思います。私は1次受けの企業に所属していたのですが、感覚的には1-4が合わせて70%, 5,6が合わせて30%ぐらいの感じでしょうか。もちろんこれも長年在籍していると言っても、その人の年齢、ポジションによって変わってきます。

SIerの開発部隊で辛いのは課長〜部長ぐらいの売上に責任を持ちつつデリバリーも見なくてはいけないポジションで、特に課長レベルがキツい気がします。別に給料も良くはないですしね。事業部長以上になってしまうと基本的に大した意思決定はしていなくてリスクも取っていないので後はぶっちゃけ運じゃないかなーと思います。まぁ部長ぐらいまでいくと外に出てもおそらくアップサイドがほとんどないのでそのまま会社にサラリーマン人生を委ねる感じになりますね。

私が観測した限りですが、SIerは拘束時間などは結構ハードな部分もありますが、現場でプロジェクトを回している人なんだかんだ結構楽しんでいるんじゃないかと思います。私も割と楽しかった記憶が多いです。このあたりなぜ「SIerの仕事は割と楽しいのか」「どんな人に向いているのか」というのは別のエントリにしたいと思います。

 

 

 

SIerでキャリアを積み重ねるとどうなっていくの?

SIerで業務系SEとして経験を積んだ後は、そのままずっとある業務のスペシャリストになることは稀で、典型的なパスとしてはエントリーレベルからPMにシフトしてキャリアを積むことになります。PMとして業務を始めると後は結構シンプルで、順々により大きな、より難しそうな案件にチャレンジしていき、それに伴って職位が上がっていく(課長→部長→事業部長→役員のようなイメージ)ということが多いです。太客の同じ業務に関連する仕事をずーっとやり続けるという人も中にはいるのですが、まぁあんまり多くはなくて、隣接する業種のクライアントに移って少しづつ経験領域を広げていく形が一般的です。 PMは割と汎用性の高いスキルで対象の領域が変わっても割となんとかなるんですが、エントリーレベルのPMは業務系SEを兼ねることが多く、業務系SEの職務内容は自分の中できちんと抽象化ができていないと違う領域に移ったときにノウハウが生かせなくて苦労するようです。

上記は業務系SEを出発点にした人の1典型的なパスの話で、その他にもいろいろなパスが存在します。例えば技術系SEの場合はアーキテクトとか環境構築系のスペシャリストとして残る人もいますし、特定のプロダクトの生き字引みたいな方向性でポジションを確立する人もいます。技術系の人の中にもPMパスで生きていく人もいて、顧客への説明の際にアーキテクチャ部分だけやけに熱のこもった提案をしたりもします。もちろん運用保守や品質管理などの専門家になる人もいます。

私が思うSIerで幸せなキャリアパス

  1. 巨大な顧客の既存システムに配属されてSE→PMのパスを辿りグングン案件サイズがデカくなる
  2. 技術系のSEとしてやりたい分野を定めてとにかくそこを極める→社内外でのプレゼンスが上がり、ポジションも上がる
  3. 新しい業務 or 技術トレンドの領域の経験をいち早く積んで、社内(できれば業界の)第一人者として横展開して稼ぎまくる

ぐらいです。3を実践して出世した人は知っていますが、結構レアケースですね。やっぱり1がマジョリティな気がします。

後はまったり行きたいと思ったら開発プロセスの中では割と地味目なFunctionのスペシャリストになって、淡々と色々なプロジェクトに行って傭兵的な仕事をこなす、というのもあります。PMOとか品質管理とかでしょうか。

現在は社外からの技術に対する評価が昔とは全然異なってきているので、SIerの中のキャリアパスも変わっていくんでしょうね。

 

なぜSIerに飽きない人がいるのか?

似たようなジャンルの仕事を繰り返すことは、確かに飽きてくる場合もありますが、それ自体が専門性を高めるために必須のプロセスです。内容が100%同じということはありえないので、微妙に違うけれども似たような案件を繰り返しこなしていく中で、自分の中で少しづつ抽象化して勘所が掴めてきて、特にリスクがどこにあるか、どうやって大惨事を避けるかが感覚的にわかるようになってきます。これがプロになるということ。負けに不思議の負けなしってやつです。

じゃあ「飽きてしまう」とどうなるかというと、専門性がそれ以上高まりません。なので「飽きる」=「この分野でこれ以上専門性を高めても面白くなさそうだと思ってしまう」ということなんだろうと思います。その点、前のエントリで挙げた広告業界なんかは人の目にも触れて派手ですし、「もっといい仕事しよう」と思えるので飽きないんでしょうね。

SIerにいる人も同じで、もっとうまくProjectを回すことに面白みを見出せる人は、飽きないんだと思います。こればっかりは個人差があるかなと。あと広告業界との違いでいうと、SIerのProjectって成功の定義が「問題がないこと」なんですよね。広告は自分が関わった案件が世間で評判になるとか、何か広告関連の賞をもらうとか、顧客の売り上げが爆上がりするとかそう言ったプラスの結果が起こることがありますよね。SIerのプロジェクトはこう言ったプラスαの評価だったり成果を実感する機会に乏しいので、そこはマイナスポイントかもしれません。世間的に大きなインフラに関わったとか、ニュースに取り上げられたとか、それぐらいですかね。ただ、どちらかというと銀行のシステム改修でATMが止まりましたとか、年金のデータがどこかにいっちゃいましたとか、トラブルで取り上げられるケースが多いように感じます。 なのでSIerに向いている(飽きない)人は、派手な成果を求めているわけではなく、トラブル耐性が強い人=基本的にドM?なんじゃないかな〜と思います。ま、そんな雰囲気全くない人もいますけど。

 

 

なぜSIerに飽きたのか?

せっかくなので私が(偉そうにも)飽きたと思ったポイントを上げておくと、結局何回か開発のプロセス(waterfallであれagileであれ)を経験してしまうと、あとは管理する情報と連携するシステムが違うだけで、大きな目で見ると同じことの繰り返しだなーと感じたからです。

いわゆるSIerが担当するようなシステム開発というのは、ざっくりいうと

ぐらいで大体パターンが決まってしまいます。通常企業がSIerを使って導入するようなシステムは実際そんなに大して難しいことはしていなくて、要するに色々な所からデータをinputして、整理整頓して保管して、算数レベルの計算をして出力する(ブラウザなどに表示するとか、外部システムに連携するとか)ってことをしているだけです。もちろんサイズが大きくなるとProject managementの難易度は桁違いに上がりますし、tech系のSEであれば新しいアーキテクチャを試して抜群の性能を目指すとか色々とワクワクポイントはあるわけなのですが。正直業務系SEだと慣れている業務を担当すればマンネリですし、慣れない業務を担当すると要件を見逃したりして炎上する確率がうなぎ上りになるので、ベテランになるに連れてそのどちらかを選ぶ形になります。

でも考えてみればこれって例えば広告業界とか建設業界とか、プロジェクト型の業界ではどこもでもほとんど同じことです。広告業界の人とか飽きるってあんまり聞かないけどどうなんでしょうね。その点コンサルなんかはある程度パターンがあるとはいえ適度に毎回顧客もテーマも変わって新鮮なのでしょう。